2018年6月14日木曜日

NO 205 老松茶器の拝見の出し方ってこんなの



北野天神として祭られた菅原道真は、
陰謀によって九州の太宰府に左遷されたそうです。
都を想い
 東風吹かば 匂いおこせよ梅の花
 主なしとて 春な忘れそ
と、庭の梅を懐かしむ歌を詠むのだとか。

すると、都から歌に詠まれた梅が飛来して根付いたそうです。
これが飛梅、紅梅殿なのだとか。

道真の京都の邸宅には、その梅と並んで、
桜と松とが生えていたみたいです。

梅が太宰府へと主を慕って飛んで行った後、
同じく道真の京都の邸宅に生えていた桜の木は、
道真が去り際に、梅にばかり歌を遺して、
自分には言葉をかけてくれなかったことを悲しく思い、
主との別れを悲しんで枯れてしまったのだそうです。

その報せを配所で聞いた道真は、
 梅は飛び 桜は枯るる 世の中に
 何とて松の つれなかるらん
という歌を詠んだようです。

すると、今度は道真に「つれない」と咎められた松が、
梅の後を追って同じく太宰府へとやってきたそうで、
これを「追い松(老松)」といい、
飛び梅(紅梅殿)・老松は、共に太宰府天満宮で、
末社の神として祀られているとか。


■初番目物 脇能 老神物「老松」
ここでは、能の演目「老松」について説明しようかと思います。

本作は、道真にまつわる奇跡を語る神能で、
簡単に説明すると、梅津某が太宰府安楽寺に参詣し、
老翁から老松と飛梅のいわれを聞き、
のち、夜ふけになって、老松の精と梅の精が現れて、
舞を舞うという話だそうです。

「紅梅殿」という小書がつくと、
通常では登場しない紅梅殿の精が出るみたいですが、
老松の詞章には、もともと紅梅殿の精が登場するような記述があるそうで、
こちらの演出の方が、本来の形に近いと考えられているとか。

では、詳細を見ていこうかと思います。


■老松の謂われ
場所は、菅原道真をまつる太宰府・安楽寺。
梅の花咲く、のどかな新春のある日のこと、
都の人・梅津某が、従者を引き連れ参詣しに来たようです。

そこに、老人と若い男がやってくるそうです。

梅津某が声をかけると、二人は、
境内の飛び梅はこの地では「紅梅殿」と呼び敬われ、
梅に続いて飛来した老松もまた、神木であると教えるみたいです。

そして老人は、この社の謂われを語るという、
「独吟(クセ)」の部分が、はじまるそうです。

この社の天神様の愛した梅と松、
梅は文学を好んで色香を増し、
松は始皇帝を雨から守った徳をもつとか。
「名高き松梅の花も千代までと・・・」
と言うと、二人は姿を消してしまったそうです。

中国では、梅は文学を好むので「好文木」といわれ、
松は秦の始皇帝の雨やどりを助けたので
「大夫」の位を授けられたという故事があるようです。

この「クセ」の部分の全文は以下のようになっているみたいです。
 「げにや心なき。草木なりと申せども。かかる浮世の理をば。知るべし知るべし.
 諸木の中に松梅は。ことに天神の。ご自愛にて.
 紅梅殿も老松もみな末社と現じ.たまえり。
 さればこの二つの木は。わが朝よりもなお。漢家に徳を現わし。
 唐の帝のおん時は。国に文学さかんなれば。
 花の色を増し。匂い常より勝りたり。文学すたれば匂いもなく。
 その色も深からず。さてこそ文を好む。木なりけりとて梅をば。好文木とは付けられたれ。
 さて松を。太夫という事は。秦の始皇の御狩の時。
 天俄にかき曇り.大雨しきりに降りしかば。帝雨を.しのがんと.小松の陰に寄りたもう。
 この松にわかに大木となり。
 枝を垂れ葉を並べ。木の間透間をふさぎて。その雨を漏らさざりしかば。帝太夫という。
 爵を贈りたまいしより松を太夫と申すなり。
 かように名高き松梅の。花も千代までと。
 行く末久しみ垣守。守るべし守るべしや。
 神はここも同じ名の。天満つ空も紅の。
 花も松ももろともに。神さびて失せにけり跡.神さびて.失せにけり。」


■老松の登場
二人が姿を消したことに驚いた梅津某は、
従者に土地の者(安楽寺門前の者)を呼ばせ、
その人から詳しく道真の事蹟や道真を慕って飛んできた梅、
後を追ってきた松の話を聞くそうです。

先刻の二人が神の化身だと確信した梅津某は、
更なる奇跡を見ようと、その夜は、松の木陰で休むみたいです。

すると、老松の神霊(松の精と梅の精)が、紅梅殿に呼びかけながら登場し、
二柱の神はこの客人をもてなそうと、歌をうたい、舞を舞うそうです。

ここで「仕舞(キリ)」がはじまるようです。

若々しい紅梅殿は舞の袖をひるがえし、
長寿の松は御代の春を祝福するようです。
そして、春の栄えは、行く末久しく続くのだとか。

この「キリ」の部分の全文は以下のようになっているみたいです。
 「さす枝の。さす枝の。梢は若木の花の袖。
 これは老木の神松の。これは老木の神松の。
 千代に八千代に。さざれ石の。
 巌となりて。苔のむすまで。苔のむすまで.
 松竹。鶴鶴の。齢をさずくるこの君の。
 ゆくすえ守れと我が神託の。告を知らする.
 松風も梅も。久しき春こそ.めでたけれ。」

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